1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:学び合いの場

「イノベーション力を獲得する」メモ

今回は参加者10人、適正人数でおもしろいディスカッションが出来ました。参加者に感謝。

【まつもとかつひで(日本オリエンテーション主宰)メモ】
参加の皆さんが有益な指摘をしてくれているので、私のいろいろなメモから、イノベーションに参考になるメモをメモとしました。
*イノベーションを考えるにあたっては、ドラッカーの『イノベーションと企業家精神』がベースになるのでは。体系的で、マネジメントされれば、イノベーションのリスクは必ずしも大きなものではない。
イノベーションのための7つの機会
1. 予期せぬことの生起。予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ出来事。
予期せぬ成功を認める勇気が必要。予期せぬ成功は兆候である。何の兆候か分析しなければならない。予期せぬ成功が必ず目に留まる仕組み、注意を引く仕組みを作る。
予期せぬ失敗もイノベーションの機会。予期せぬ失敗時は、外へでて、よく見、よく聞くことである。
2. ギャップの発見。現実にあるものと、かくあるべきものとのギャップ。定量的より定性的。
業績ギャップ 、認識ギャップ、価値観ギャップ、プロセスギャップなど。
3. ニーズの存在
プロセスニーズ、労働力ニーズ、知識ニーズなど。
4. 産業構造の変化
「我が社の事業はなになのかを問い続ける」変化に対して新しい位置づけを考える。数字や報告は古くなった市場を反映している。いくつかの技術が合体したときも、産業構造の急激な変化が起きてくる。また仕事の仕方が急激に変わるときにも構造の変化が生じる。
5.6.7は企業や産業の外部にあるもの
5. 人口構造の変化
予測がもっとも容易である。しかもリードタイムまで明らか。
6. 認識の変化。すなわちものの見方、感じ方、考え方の変化。
7. 新しい知識の出現
これらの順位は信頼性と確実性の大きい順位である。
*イノベーションが民主化する
ユーザー自身イノベーションを手がけるようになってきた。彼らは自分の欲しいものを自分で発明し作り上げる。そしてリードユーザーが開発した新製品がターゲット市場で明日欲しがられるケースが多い。スケートボード、ウインドサーフィン、スノーボードはどれもスポーツ用品メーカーではなく先端ユーザーが開発した。人工心肺も医療器メーカーではなく、先端ユーザーである医師だった。先端ユーザーと共同で開発。
エリク・フォン・ヒッペル マサチューセッツ工科大学教授
*イノベーションの逆襲
世界を驚かす製品が新興国の側から現れるイノベーションの逆襲が始まる。
20ドルパソコン(インド)人口30億人の新興国の市場をどうとらえるかが重要。YKKが「YKK」に続くブランド「ARC」を立ち上げ。年374億本の7割を売る。新興国で1万回の上げ下げに耐えるYKKは過剰品質。ARCは品質基準を見直し、価格を半分に。中国の衣料企業350社が採用。ベトナム、タイにも進出しつつある。
*独創的才能とはイノベーション
最近の認知科学では、記憶は脳内に蓄えられた事物のコピーとしてではなく、むしろ外界とのアクティブな相互作用ととらえられる。
*時代・市場・生活価値観の変化がイノベーションを生み出す。
「板橋区であった、生活保護を受けている人が生活していた旅館が消失、死者が出た。」1泊2300円で宿泊できる生活保護者向けアパートの開発は?

【高橋正二郎(日本オリエンテーション客員研究員)メモ】
*イノベーションに取り組むには「勇気」が必要だ。
1)異議を唱え現状を変えるという意識、2)失敗は起きるもので失敗から学ぶことができる意志、この2つから勇気が生まれる。
*今抱えている問題を「怒り」のレベルにまで昇華すると大きな推進エネルギーが得られる。
・問題を明らかにすることが重要だが、文字で表わすなど形式知化することが大切。
・さらに、形式知化した問題を「怒り」レベルに引き上げると推進するエナルギーが湧いてくる。
・ジョブズのパソコンのファンの音へのいらだち・・・、「こんなもの抹殺してやる」という気持ちが破壊的イノベーションの始まりなのだろう。
*継続する力も大いに必要。
・痛くない注射針を開発した岡野雅行は常々「止めたら失敗。だから止めない」と言っていた。
・「ウコンの力」は、当初社内で評価されずに企画が見送られていたが、適宜な時機まで待ち続けられたことも成功につながった。
*「第3のビール」は優れた改良、「ノンアルコールビール」はイノベーションだ。
・第3のビールは技術的な革新は大きいが、市場への影響は従来の延長上でしかない。
・ノンアルコールビールは技術的な評価は低いが、新たな価値提供による市場を創造したとこによるイノベーション性は大きい。その上、極めて優秀な商材である。
*『イノベーションのDNA』が推奨する具体的方策はオーソドックスなものが多く、きちんと実行と継続ができるか否かにかかっているようだ。
・「なぜ、なぜ、・・」の繰り返しを推奨しているが、松本さんの「ヨーグルトを食べる」ことに「なぜ、なぜ、・・」を繰り返したら「快便ビジネス」に辿りついた。
*まつもとかつひで流で考えてみる
・再定義 : 商品の定義を従来のカテゴリー的な言い方から、真の目的的に言い換えてみる
・キャンディーは甘いお菓子ではなく、「口唇刺激ストレス解消商品」 ⇒ フリスク
・SWATCHは単なる時計の製造販売ではなく、「顧客に感動を提供する企業」だそうだ。子供向けのフリックフラックは「お子様が楽しみながら時計の読み方を覚えられる」というコンセプトだ。
・その他の例:■1日4食:新たな食場面の開発。ダイエットにも効果的■キッチンと家の関係を逆にしてみる■手食:手で食べる食品の楽しさ、食物の本来の意味を再考してみる(手でつくるオニギリなども一緒に考えてみる)
*まつもとかつひでの推奨本:『没落する文明』萱野稔人・神里達博著、集英社新書(¥756)

【参加者のコメント】
<Aさん>
*再定義について
非常に興味深く拝聴致しました。経営論でいえば、ドメインの再定義のお話に近いように思いましたがいかがでしようか。いずれにせよ、再定義のポイントは、より上位<統合的>概念に上ることなのかもしれませんね。また、そこではやはり社会との繋がりや文化価値の創造の観点が重要なように思います。
*マクロとミクロのイノベーション
本日あまりお話にはでてきませんでしたが、企業としては、3Mのように個人のイノベーションの生成プロセスには触れず、組織として網をかけ振るいにかけていくやり方[淘汰重視型]と、生成プロセス自体の原理までたどって、イノベーション人材の育成の仕組みを開発していくやり方[プロセス重視型]の二つがあるように感じています。どちらも大事な取り組みですが、マクロとミクロという対比概念的に考えてみることもできそうですね。
*発火(スパーク)の話がありましたね。
アルコールランプも、芯にアルコールが染み込んでいないと火がつかないように、イノベーションのためにも、日ごろから想いや情報をあふれるぐらい満たしておく必要があると感じた次第です。

<Bさん>
*今回の話の中でイノベーションの「力」を獲得するには、
不満の解消 ⇒ improve
怒りの解消 ⇒ innovation
と言うような「問題意識」の強さが必要と感じた。「淘汰の圧力が掛かると進化が始まる」という言葉も心に響いた。
*また、潤沢な資金でTVCMを打つより、少ない予算でどう目立たせるかといった中小企業や地方のCMがおもしろいのも逆境的な所からの発想が良い物を作り出すエネルギーなのか?とも考えました。
*ロジャースの消費者観点でのイノベーター理論だとイノベーション発想(流行)は一部の先端の人間だけの固有発想のような気がしたが、今回の話の中では、誰でも怒りや逆境においては克服しようとする「意識力」があればイノベーター発想が生まれるのではと考えました。

<Cさん>
日常とは違う貴重な時間を過ごせました。以下、「気になるメモ」です。
*イノベーションには正(楽しさ・気持ちよさ)・負(行き詰まり・怒り)いづれかにせよ大きなエネルギーが必要
*企業は実はイノベーションを求めてはいない?(成功・売り上げが求められている)であれば、イノベーションは必要なのか?

<Dさん>
有意義かつ刺激ある時間を持つことができました。出張した甲斐があり、機会を与えてくださったことに感謝します。
*皆様が書籍を通して知識や刺激を日ごろから探求している姿勢が刺激になりました。3冊以上読書しておられる方にはビックリ!会を通して「粘り強く最後まであきらめずに、こだわりを持って達成できるまでやり続けることが重要」と感じました。
*他社品の開発導入事例が "すっと腹に落ちました"。
*不便では改善どまりで、"怒り"まで達した不満がイノベーションに導く可能性が肝となることことに納得してしまいました。
*既存視点を捨て、ストレス解消が、実現への近道とも感じました。

<Eさん>
「イノベーション」を再考察するという機会に恵まれ、改めて今の仕事を見つめ直す事が出来ました。イノベーションとは「再定義」すること。