配信日:2012年9月3日
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■■■ 官能開発のメールマガジン
■□■ ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■ 発行者:日本オリエンテーション
■□■ 毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.2□■
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英 の共同メルマガです。
■「隠し味・隠し香が魅力を醸す」大西正巳
料理の世界では、最後は「隠し味」勝負だと言われます。食品や飲料でも隠し味のみならず「隠し香」が個性を決めることが多いと思います。特に酒の香気成分には閾値付近のごく微量なレベルで思わぬ特徴を発揮するものがあります。また同じ成分が濃度によって全く異なる香りの印象を与えるものもあり、特定の濃度を境に臭みとうまみが行き来する感じになります。また他の香りを官能的に抑えこむことや、逆に引き立てること、更には全体の爽快感を増すという不思議な現象もあります。機器分析の限界は、フレーバー成分の濃度を正しく検知してもその質的変化や相互作用による官能的な香味や後味の印象の移り変わりまでは示してくれないところだと思います。
香り・味わいだけでなく、状態によって見え隠れするもの、あるいはよく見ると浮かび上がってくるもの、ゆらぐものに惹かれることもあります。分かり易い自己主張型の「表」の個性だけでなく、隠し香味/隠れ香味を探索する楽しさを官能は教えてくれます。おいしさの幅と奥行きは無限であり、魅力のあり方も様々に存在しうるものです。おいしさや特徴の感じ方は勿論人それぞれですが、隠し味はつくり手の意図と消費者の感じ方との微妙な「かけ引き」を生む重要なポイントです。
文化や伝統の世界にも実は隠し味や隠し香(匂い)というものがあり、大切な役割を演じています。同様に人間の味わいや魅力も隠れた部分から醸し出されることもあるでしょう。モノの本質的な魅力とは何か、そのハードやソフトに内在する隠し味的な良さとは一体何かを考察するには、好き・嫌いの結論を急がずに、まずは官能・感覚を駆使して素直に感じとり、想像力をまぶして陰と陽、善と悪、表と裏、日向と日陰の切り口、あるいはそれらの二項融合的な切り口から効用を眺めてみることをお勧めします。
■「思いをことばに、ことばをかたちに」高橋正二郎
商品開発の現場には、「思いをことばに、ことばをかたちに」という常套句があります。具体的には、アイデアをコンセプトとともにことばとしての企画書にまとめ上げ、その企画書をもとに試作品や商品が生み出されるわけです。ここで重要なのは「ことば」で、折角のアイデアも企画書に書き込むことができなければ、お客さまに喜んでいただける商品にはなりません。メーカーが商品を大勢の人でたくさんつくるときは、思いを共有化されていないと商品はつくることができません。もっとも「ことば」を必要としないと思われる場合もあります。名人や巨匠が逸品をひとりで1個だけつくる場合で、秘めたる思い→黙々とつくりだす→そのまま完成、という工程が想像でき、シェフがつくる渾身のひと品などはこのように出来あがると思います。おいしさをつくるのはシェフだけではなくメーカーもつくります。また、メーカーがつくる商品の中には、おいしさだけではなく気持ちよさや心地よさのような思いが中心を占める商品もあります。味や香りや感触などによる感性的価値は、どのようにして企画書に書き込めばかたちになるでしょうか。ここで力を発揮するのがSDP(感性価値開発プログラム)です。味や香りや感触などの感性価値を客観的に記述し、かたちにすべき価値の共有化を推進し、思いの実現を確実なものにします。また、SDPで記述された感性価値は、定量化、視覚化され、開発にかかわる人たちによる検討やブラシアップが可能で、より高い感性価値の提供も可能にします。
■「質感、存在感を考える」松本勝英
重厚なヨーロッパの建築を支えているのは、建築技術の上手い下手ではなく、技術の背後にある哲学である。要約すれば、第一に材料の使い方、第二に設計思想、第三に社会の哲学の違い。
1)材料の使い方
4.5mmの厚さをそのまま使う。1.6mm板を補強するため角や線を直角に折り曲げることはしない。強度を必要なところにそれに適した材料を当て、材料の良さ、特性を発揮させる。
2)設計思想
建物の設計手順に「芸術監督」「価値のチェック」。総工務の数%は必ず芸術家のために割く。
3)社会のコンセンサス
ひとたび形をなせばそれは社会的存在となる。社会の資産としてふさわしいものでなければならない。
皆さんのご意見、投稿大歓迎です。
≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。
■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。
■■松本勝英(まつもとかつひで)
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを29年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。
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■□■「SDPメルマガ」
■■■ 第2号(2012/09/03) (c) 2012Japan Orientation
■□■ 発行者 日本オリエンテーション 大西・高橋・松本
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