1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「SDP:Sensory Design Program−感性価値設計開発研究所」

【SDP:Sensory Design Program メルマガ】第5号

配信日:2012年12月3日

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■■■        官能開発のメールマガジン
■□■   ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■     発行者:日本オリエンテーション
■□■       毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.5□■
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英 の共同メルマガです。

◆INDEX
1.『官能用語は生きている』大西正巳
人は香り・味わいを利き、その印象を言葉で表します。反対に言葉を聞き、具体的な香り・味わい、食感をイメージします。従って用いる言葉と表現の仕方がモノの姿と他人とのコミュニケーションの深さに影響します。
2.『尺度をきめる』高橋正二郎
「ことば」が決まったら、「ことば」の程度を表わす尺度が必要です。この尺度は客観性が重要であるので、モノを使って表わします。目盛の上に参考品を丁寧に置いていくことから尺度が構成されます。
3.『生得的快を考える』まつもとかつひで
いろいろな人間行動、環境の中に、生まれながら快と感じる生得的快感覚があります。商品のトライ、リピートにとって隠れた大事な要素では。

■「官能用語は生きている」大西正巳
人はそれぞれの生活の歴史の中で感覚を働かせているため、モノや状況が発する香り・味わいの感じ方や重要度には個人差が出ます。そして体験した官能情報を記憶するための脳内の「引き出し」のあり方も様々だと思います。言葉ひとつで頭に浮かぶおいしさの質が変わり、場合によっては全く異なるモノを想像してしまうこともあります。そのため官能結果を整理する、また人に伝え、共有化するには「言葉(特に官能用語)」という生きた道具が大切になります。言葉の意味合いや用法は時代と共に変化していくこともありますが、官能用語は幅広く集め、その由来や背景、意味合いと事例、派生などをまず押さえておきたいものです。
そこで専門的/技術的な教科書と言うよりは、一般的な図書で参考になるものを少し挙げてみます。例えば「食語のひととき:早川文代著(毎日新聞社)」、「味ことばの世界」/「ことばは味を超える」:共に瀬戸賢一編(海鳴社)」はオノマトペや情緒的なものを含めて言葉の意味や体系的な位置付けを理解するのに役立ちます。また官能を駆使する匠の世界から、色々な達人の官能に対するポリシーや感性、官能スキルや表現方法を学ぶには、「匠の技・五感の世界を訊く:田中聡著(徳間文庫)」「調香師の手帳・香りの世界をさぐる:中村祥二著(朝日文庫)」、「プロフェショナル・仕事の流儀」(NHK出版)、また朝日新聞の過去の連載「隠し味探訪(2001〜02)」と現在連載中の「凄腕つとめにん」の 記事が有用です。モノの質を鋭く評価し、モノに密着して磨く官能の技と創造性、美味を造りこむ秘訣などが参考になり、読み物としても大変面白いと思います。
切り口は少し異なりますが、バーテンダーやソムリエの愛読書にもなっている「きいろの香り:富永敬俊著(フレグランスジャーナル社)」もお勧めです。ソーヴィニオン・ブランのワインの香味を中心とした興味深い構成と内容になっていますが、その考え方は酒類・食品メーカーが製品の「香り・味わいの特徴−関連成分−由来・つくりとの関係」というメカニズム情報(品質−技術マップ)をまとめるのに大いに参考になると思います。

■「尺度をきめる」高橋正二郎
前回のように「ことば」が決まったら、次は「ことば」についての「ものさし」をつくります。例えばチョコレートの「甘さ」ついては、「甘過ぎる」とか「あまり甘くない」という表現から、「ほのかな甘さ」、「ほど良い甘さ」など、いろいろな甘さの程度が表わされます。それでも、これらのことばだけで甘さの程度を伝えようとしても少々無理があります。それは、人により、場面により、同じことばでも程度が同じとは限らないからです。そこで、程度を客観的に表わすものさしが必要になるわけです。客観的な尺度の代表として1mや1インチなどで表わす長さがあります。長さも「少し長め」とか「かなり長め」と言っていては不便があるわけで、そこでメートル法やヤード・ポンド法などの共通単位を決めた訳です。その決め方ですが、メートル法の1mの長さは北極点から赤道までの長さの1000万分の1としたのが最初です。つまり、地球という具体的なものを使って1mの定義をした訳です。
チョコレートの「甘さ」も同じようにものを使って、つまり複数のチョコレートを使って尺度の定義をします。市場にあるいくつかのチョコレートを用意して、このチョコレートを「甘さ」に応じてスケールの上に置いていけば、ものさしができあがります。まず、スケールを用意します。普通は、0から10までの11ポイントスケールを使用します。次に、参考品として位置付けるチョコレートを5〜8品程度用意します。この参考品の中から一番「甘さ」の強いモノをポイントの10に置きます。続いて、一番「甘さ」の弱いものを0もしくは1に置きます。ここで、「甘さ」の両端が決まった訳で、あとはこの両端の間に置いていけばでき上がります。真ん中より右か、それとも左か。かなり右か、やや右か。というように参考品を置いていくと、大まかな位置づけができ上がります。最後に、となり同士の参考品を比較して微調整すれば、尺度が完成します。気持ちを集中すれば不可能ではありませんので、一度試されることをお奨めします。触覚に関わることは生活上の経験が少ないので難しいかも知れませんが、ことばが用意できていれば、即チャレンジだと思います。

■「生得的快を考える」松本勝英
生得的快とは生まれながらにして快と感じる感覚です。甘みは生まれながらの「生得的快」。辛み、苦みは「学習的快」です。生得的快情報として、強い色彩のコントラスト、原色、金属色、反射性素材使用、光のゆらぎ、人工的照明、仮面(威嚇の表情、体を出来るだけ拡大し、目をむき、歯をむき出した表情)、16ビートのリズム(ピグミーのポリフォニー16ビートが基本)、日本の太鼓芸能のリズムも同じです。
<超音波も生得的快>
千葉工業大学 情報ネットワーク学科 大橋力教授は、「人間の耳には聞こえない10キロヘルツを超える高周波音に『癒し』の効果があることが発見された。この超音波は脳の視床と呼ばれる知覚をつかさどる部位の血流量を増やす視床は大脳皮質などよりも古い、脳の原始的な部位であり、『人間が本能的に超音波を求めている証拠』。コンクリートで覆われた都市では自然界の超音波が届かず、超音波の欠乏が現代人のストレスになり、生活習慣病の引き金になっているのではないか。高周波をたくさん含むインドネシアバリ島の民族楽器ガムランはα波が高まり、トランス状態になりやすい。虫、鳥、葉や川の音。熱帯雨林は高周波の宝庫だった。」と述べています。
<生理的快も生得的快>
「快食」行動も「生得的快」では。吸う、かむ、なめるなど。
「快眠」行動も「生得的快」では。くるまれる、軽く叩かれる、横になるなど。
「快便」行動も「生得的快」では。排泄感。
 <胎内体験も生得的快>
胎内体験、出産体験をどう考えるか。しがみつく、しっかりくるまれる、ゆする、抱きしめ、心臓のリズム、においを覚えるなどを愛情接触として考えてみたら。出産後の母親と赤ちゃんの喜ぶ関係の中に「生得的快」が見られるのでは。赤ちゃんがいる人はぜひ気をつけてみて下さい。
商品の中に生得的快を埋め込むことが、トライアルにとってだいじなことでは。

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◆皆さんのご意見、投稿大歓迎です。
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 ・お客さまの共感を呼ぶ感性価値の溢れた「生活DELIGHT」の商品アイデアを提供します。
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≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。

■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。

■■まつもとかつひで
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを29年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。

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■□■「SDPメルマガ」
■■■ 第5号(2012/12/03) (c) 2012Japan Orientation
■□■ 発行者 日本オリエンテーション 大西・高橋・松本
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