配信日:2013年4月1日
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■■■ 官能開発のメールマガジン
■□■ ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■ 発行者:日本オリエンテーション
■□■ 毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.9□■
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英 の共同メルマガです。
◆INDEX
1.『官能関連の暗黙知と形式知のスパイラルアップ』大西正巳
暗黙知と形式知の両輪が組織の血や肉となり、開発体質が強化されます。暗黙知の形式知化をうまく進めると、暗黙知を更に高めたいという意欲も湧くものです。
2.『触覚のふしぎ』高橋正二郎
化粧品の官能評価を通じて触覚とお付き合いしてきました。触覚は五感の中では特異な存在で、他の感覚よりも気持ち良さを直接的に感じることのできる感覚器官のように思えます。現在、触覚の研究はどんどん進んでいます。もっといろいろなことがわかってくると、一番魅力的な感覚になるかも知れません。
■「官能関連の暗黙知と形式知のスパイラルアップ」大西正巳
官能評価に限らず、商品の評価や設計・開発を行えば必ず様々な情報が得られます。一般に戦略課題のPDCA的な管理・標準化が進み、各部署・各人の仕事のプロセスと成果/問題点は基本的には共有(ファイル化)されていると思います。
しかし属人的なデータや知見、専門的なノウハウなどの不定形でビジュアル化しにくい暗黙知は埋もれがちとなります。官能評価や官能開発を通じた個人的なアナログ情報もその代表例です。部門を問わず、苦労して得た個人の感覚的・感性的な知識と知恵は簡単にはオープンにしたくない意識、あるいはマニュアルに頼らずに「後ろ姿で学べ/盗め」という考えも関係していると思えます。勿論、経験豊かなスペシャリストの仕事を真剣に観察し、考え方や一つひとつの動作の意味合いを理解する努力は必須ですが、社内的には高度な匠の領域の暗黙知も「見える化」していくことが大切です。そして固有技術やノウハウの社外への流出を防ぐ手段を講じた上で、その財産を組織として継承し、活用していくことが重要
だと思います。「まねび、学び、そして舞え」と言われるように、スキルやノウハウを単に踏襲していくだけでなく、感覚・感性をストレッチして新たな世界を拓く官能開発型人材の育成には不可欠です。
官能経験に基づく暗黙知を形式知化していく方法として、「聴く力」が必要ですが、社内の官能プロにインタビュー/ヒアリングを行うことをお勧めします。適当なフォーマットを用意し、現在までの官能体験や知見を記入して頂く方法では表面的な内容が記されるのみで、穴だらけの表になります。現場の叩き上げの匠になると香味に関する様々な現象の「要因と結果」、取り扱いのコツ・留意点を感覚的に熟知していますが、寡黙で表現するのは苦手な人が多いと思います。また、本音の部分や失敗事例は紙面には出にくいものです。そこでフォーマルな場と酒の席などインフォーマルな場を組み合わせて(先輩)プロに敬意を表して丁寧に取材し、生の言葉を聞き取る方法が効果的です。また時には社内の多様な
官能のプロ(OB含む)を一堂に招き官能(評価・開発)セッションや勉強会を開く方法もあります。いずれの場合も、目的は官能経験に基づく知見・ノウハウを数多く拾い、称え、共有することであり、たとえ失敗に基づく情報であってもマイナス評価として捉えないことです。過去の問題点は本質を眺め直すと将来の「開発の芽」になることがあるからです。
このようにして得られた暗黙知は、形式知のひとつである「品質−技術マップ」として集約したいものです。これは「QDAチャートの個々の評価用語(つまり香味の特徴や成分)をコントロールする条件の一覧表」であり、製造技術のハンドブックと言うよりも「香味の評価/香味づくり」のノウハウ集になります。
ビジョンと価値観を共有し、企画・設計・開発・評価の"達人"として成長を喜び合う風土と信頼感やチャレンジ精神を醸成することにより個人と組織の「知」と「スキル」がスパイラルアップしていくのだと思います。
■「触覚のふしぎ」高橋正二郎
化粧品の官能評価に長い間携わってきましたが、化粧品の感触の評価は触覚ですので、触覚ならではのおもしろさがあります。触覚の研究は最近の発展にはめざましいものがあり、錯触覚の発見など素人目にもおもしろいものがあります。とはいえ、実生活の中での触覚が登場する場面は、視覚、聴覚、味覚などと比べたら少なく、触覚にまつわる話題もあまり多くありません。例えば、朝、お味噌汁のお椀に軽く口をつけただけで、「あっ、しょっぱい」と、いつもより少し強い塩気に対して俊敏な反応ができます。やはり、出番が多いからの出来事と思われます。これに引き換え、これと同様の触覚にまつわることと言えば、お風呂の湯加減ぐらいで、少し淋しいです。
化粧品の官能評価は使用部位が顔であるため顔で行います。顔というキャンバスの上にクリームを載せて延ばしたとき、心地よくクリームが延びると本当に気持ちの良いものです。この状態をより考えてみるために、キャンバスを顔から前腕部の内側に替えてクリームを延ばしてみると、同じようにクリームの延びは起きるのですが、気持ちよさは顔のときほど感じてきません。顔というキャンバスは心地よさを感じているのです。同じ顔でも気持ちよさを一番感じるのは頬で、そよ風も頬で感じます。顔の部位の中では唇や舌の先の方が頬より敏感なのですが、気持ちよさへの反応は頬の方が上のようです。また、指先は頬よりも敏感なので、気持ちよさを感じるよりは状況の分析の方が得意のようです。頬がキャンバスなら指先はブラシの役目をしているようで、分析的なことは指先で、気持ちの良さや具合の悪さは頬のキャンバスの仕事のようです。パンストなどを手で触れただけで身に付けた感触がわかるのもこの分業によるものと思われます。また、腰へ貼る貼り薬なども、腰では使用感の細部までわかりませんが、前腕の内側か手の甲などに貼ってみると状態がよくわかります。すると、腰は感度が鈍いから評価ができないと思いがちですが、そうではないのです。一番大切な、貼ってみての気持ちの良さがわかります。「細かいことはわかりませんが、気持ち良いものがいいです」と仰っているお客さまのようで、全く頭が下がる思いです。
触覚という感覚は状態を感じる分析的な機能だけではなく、気持ちよさも感じる機能を併せもっていることが、五感のなかでも特異な感覚に思えます。背中や脚など広い部位を程よい動きでさすってもらうととても気持ちの良いものです。また、適度な温度のお風呂に浸かったときなど、思わず「極楽、極楽」などと言ってしまうのも触覚ならではの出来事かと思います。視覚、聴覚、味覚、嗅覚と平衡感覚は特殊感覚という範疇に入っていますが、触覚は体性感覚の中に位置づけられます。特殊感覚は理性的すぎるのか、気持ちの良さには即座にはつながらないようです。これに対して触覚は分業が遅れているのか、気持ち良さを感じることもできる不思議な感覚です。近年、触覚の研究は盛んになってきていますので、
この辺りのことも明らかになるのが非常に楽しみです。
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◆皆さんのご意見、投稿大歓迎です。
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・お客さまの共感を呼ぶ感性価値の溢れた「生活DELIGHT」の商品アイデアを提供します。
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≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。
■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。
■■まつもとかつひで
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを30年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。
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■□■「SDPメルマガ」
■■■ 第9号(2013/04/01) (c) 2012Japan Orientation
■□■ 発行者 日本オリエンテーション 大西・高橋・松本
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