1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「SDP:Sensory Design Program−感性価値設計開発研究所」

【SDP:Sensory Design Program メルマガ】第43号

配信日:2016年2月2日

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■■■        官能開発のメールマガジン
■□■   ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■     発行者:日本オリエンテーション
■□■       毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.43 □■
暖冬と思いきや、突然の降雪がありました。今年も突然の多い年になるかと思います。官能を使って価値を開発する【官能開発】のメールマガジンです。
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英の共同メルマガで、お陰さまをもちまして通号で43号になりました。

◆INDEX
1.『官能評価の原点』大西正巳
官能評価・開発は言葉に始まり言葉で終わると言っても過言ではありません。感じた印象は言葉で表し・伝え、また使用した言葉そのものが品質をイメージさせるからです。

2.『QDAから嗜好を捉える』高橋正二郎
競合自他社品のQDAを描くことはそのまま市場分析になります。さらにQDAを上手に使いこなすことにより、官能空間上に特定の購買層の嗜好を意識しながら位置づけることができます。

■『官能評価の原点』大西正巳
酒類・飲料・食品メーカーの品質評価や商品開発の担当者と官能評価/官能開発、あるいは商品の「企画、評価、開発」のシステムや連携に関して意見交換を行う機会があり、大変参考になります。酒類に関しては流通や販売・サービス担当者の“官能をコアにした商品評価”についてのニーズも高まっています。商品や製造に関する情報整理がある程度進み、中味品質についての関心が増してきた結果だと思います。更には消費者の官能志向の傾向も含めるとまさに官能・感覚重視の時代、そしてそこから培われる感性と価値観重視の時代ということが実感できます。酒類ユーザーに官能評価が注目される要因はいくつかありますが、まず「おいしいもの/ホンモノ/個性的で魅力あるものを飲みたい」という背景のもとで「酒の個性や魅力とは何かを知りたい」→「おいしさや香り・味わいをもう少し評価できるようになりたい」→「おいしさが得られる理由や他製品との差を理解したい」という官能品質(本質価値)に対する自然な欲求が目立ちます。つまり製品のコスト・パフォーマンス(特にイメージや情報だけでなくリアルな中味の値打ち)を自分なりに評価・納得したいということだと思います。また特定の酒類しか飲まないユーザーはまだ多いものの、相対的に色々な酒類を場面ごとに味わう層、今までと違う酒類に惹かれる層も増えてきました。そしてユーザー自身の感覚で多様な製品/多様な香り・味わいを選択し、経験していくことにより次第に官能力も鍛えられ、品質をみる目が肥えてきます。このような状況を踏まえると、何よりも消費者や他社よりも圧倒的に優れた官能意識と官能評価・開発のスキルの重要性が増してきます。それらの実効性を高めていくためにはメーカー自身でまず実態(強み・弱み)を再確認し、戦略的且つ全社的に課題に取り組んでいくことが大切です。個人的な感想ですが、各メーカーの基本となる個々人の官能力・識別力は素晴らしいと思います。ただ酒類のタイプと規模にもよりますが、系統的な官能評価の体制づくりや人材育成、そして官能情報の共有化が不十分なメーカーも見受けます。その結果、品質の評価・設計・開発あるいは製造を通じて得られる品質や技術的な情報から個々の官能的な特徴を動かす要因と条件を一覧表にまとめあげる「品質−技術マップ」のような形式知の蓄積と継承が乏しくなります。以前にも触れましたが、このマップは製品の「企画・評価・開発・製造」全体に活用するためのメーカー固有のノウハウ集とも言えます。また官能と嗜好との関係を追及する元データのひとつにもなります。
さて現状把握の第一歩として、身近な問題であり最も基本となる官能用語、つまり普段用いている特徴を捉える言葉とその意味合い/定義の見直し、そして個々の特徴/用語を端的に示すサンプルの整備状況や官能スコアリングの基準等の見直しが重要になります。自社に適したより良い官能評価を目指し、モノを挟み、官能特性と用語の意見を交わす中から、官能機能全体に関する課題も見出せるものと信じます。

■『QDAから嗜好を捉える』高橋正二郎
美味しい味、ステキな香り、気持ちのよい感触などは感性価値と呼ばれていますが、この感性価値の顔のひとつに「嗜好の対象」であることが考えられます。味覚、嗅覚、触覚に関わる事柄は好き嫌いで語られることが多く、お客さま自身が自分で判断できる価値です。ですから、モノづくりの現場ではお客さまの求めていらっしゃる味や香りや感触などを突き止めるために日夜苦労を重ねています。お客さまの日々の暮らしを想定しての好みを想像してみたり、市場で評判の商品から嗜好を予測してみたり、その努力はどのメーカーも大変なことだと思います。
官能空間上に市場の自他社の競合品を官能評価して、それぞれの試料を位置づけ、マップをつくります。そのマップ上に市場からの情報を重ね、どの購買層にどの競合品が対応するかマーキングをして購買層間の嗜好の分布を図示していきます。そして、この購買層にはこの感性価値をお届けしようということになります。いわゆる、セグメンテーション、ポジショニング、ターゲティングという一連の作業です。消費者に試料を実使用して確かめる嗜好型の官能評価が実施できれば近道ですが、ここは自前のQDAに市場の情報から購買層を重ねる方法で一連の作業を考えてみます。
作業としては、まず自社品を含めた市場競合品を試料としたQDAを作成します。同時に市場からの情報と照らし合わせて購買層と試料との関連づけをしておきます。つまり、試料が動けば購買層も一緒に動くことになります。そして、QDAを構成している特性から試料の括り分けをします。官能評価のスコアによるクラスター分析からの括り分けも有効で、二次元の特性ごとのグラフを描いての括り分けも有効と思われます。この段階がセグメンテーションで、購買層がセグメンテーションされたことにもなります。
次はポジショニングです。その第一歩はマッピングを描くことで、まずは最適と思われる2つの官能特性を選び出し、その特性を軸に構成される官能空間にセグメントされた試料群を位置づけしていきます。すると、セグメント間同士の位置関係が視覚化され、ポジショニングが成立します。
しかし、うまくいかないときもあります。一箇所にかたまってしまったり、あるいは重なってしまったり、どうもハッキリしないようなら別の官能特性を選び卦替えて、新たなマップつくりに挑戦します。この工程を何度か繰り返すうちに、各購買層の嗜好の状況がひと目で見える表現力の豊かなマップが出来上がるでしょう。
最後は仕上げのターゲティングですが、マップの中からマーケティングの目標になる官能の領域を選び出します。目標となる領域には特定の購買層がいることも判断の重要な基準になります。領域の囲い込みは特定の購買層の囲い込みでもある訳です。結果は、あるセグメントがそのまま適用されたり、いくつかのセグメントの括り合わせであったり、また、セグメントの間隙に位置することもあるでしょう。選ばれた領域に相当する官能特性で示された領域がターゲティングになります。
実は、これらの作業はシーケンス的に速やかに順送りされるものではありません。セグメンテーションの作業中にターゲティングが思い浮かんだり、ポジショニングをしたら別のセグメンテーションがひらめいたり、行ったり来たり飛び越したりの作業を捏ね回すようなことになります。
さて、こうして官能空間上に位置づけられたターゲットの領域の官能特性は、試料に触れて官能特性を確かめながら吟味する必要があります。そのとき、この領域の裏側には特定の購買層がいる訳で、この購買層の属性がもつ価値観や行動傾向も考えながらの吟味になります。最後に、ターゲットとなった領域を必要な官能特性によるスコア表示ができて、嗜好の把握になります。

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◆皆さんのご意見、投稿大歓迎です。お待ちしています。
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≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。

■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。

■■まつもとかつひで
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを33年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。

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■□■「SDPメルマガ」
■■■ 第43号(2016/02/02) (c) 2012Japan Orientation
■□■ 発行者 日本オリエンテーション 大西・高橋・松本
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