配信日:2015年8月4日
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・■■■ 商品開発・マーケティングの
・■□■ MATSUMOTO・新商品開発MINERAL
・■■■ 発行者:日本オリエンテーション 松本勝英
毎月第1・第3火曜日発行(創刊 1999/10/01)
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■□ 第382号 Table of Contents □■
◇マツモト・商品開発ミネラル
『ダイソンの開発3原則-1「水平思考」』
『ダイソンの開発3原則-2「アイデアを絞る」』
『ダイソンの開発3原則-3「粘り強さ」』
『ダイソンのマーケティング3原則-1「消費者調査に頼らない」』
『ダイソンのマーケティング3原則-2「技術革新を持つ良い製品は宣伝しなくても売れる。過剰な宣伝 より技術開発に投資する」』
『ダイソンのマーケティング3原則-3「良い製品は高くても消費者は付いてくるので安易な安売りはし ない。価格の信頼性が商品力を裏付ける」』
<伝言>
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2015年8月4日(火)
今回は、ダイソンの開発3原則とマーケティング3原則を取り上げてみました。
わたしの好きな3の原則の、3×3の原則です。
「まだ一杯になってないのにパックの目づまりで吸引力が下がるじゃないか!」という日常のフラストレーションから、当時の市場を席巻していた紙パック式掃除機の欠点を発見。吸引したゴミを竜巻状に高速回転させ、その際に起きた遠心力で空気とゴミを分離するサイクロン式掃除機を生み出した、その「開発の3原則」とは。
ダイソンの売上高は約2300億円(13年)で大半を掃除機が占め、うち日本は約2割を占める。14年は日本での掃除機のシェアで販売金額ベースでは約24%と1位に。その成功のための「マーケティング3原則」とは。
『逆風野郎! ダイソン成功物語』(樫村志保訳、日経BP社)、日経MJプレミアム2015.06.17を参考にしました。
■『ダイソンの開発3原則-1「水平思考」』
★気づき
『水平思考』
ダイソン氏が王立美術大学(RCA)時代から開発を手伝い、最初に頭角を表した発明品が、「シー・トラック」という上陸用高速艇だ。
この開発中に知ったポリエチレンを球体に成形する技術が、次の成功につながる。
車輪の代わりにポリエチレン製の球体をつけた「ボールバロー」という土木用押し車を発明。価格は従来品の数倍したものの、「轍がつかず、力もいらず操作できる」として、飛ぶように売れたからだ。このボールバローの加工工程で、樹脂の粉末塗装をする際、塗布されなかった樹脂を集めて再利用するため、高さ10m弱に及ぶ巨大な遠心分離機「サイクロン」を使っていると知った。それがかの名掃除機の着想のルーツだ。目の前の「当たり前」を水平にずらし、別の場所にもっていくことで画期的なアイデアにしてきた。
★コメント
成功を続けることの発想として「水平思考」は有効です。点的、バラバラのアイディアでは、経験の蓄積が生かされないので成功の確率が低くなる。
エドワード・デボノ「水平思考」は大変参考になる。
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■『ダイソンの開発3原則-2「アイデアを絞る」』
★気づき
『アイデアを絞る』
ダイソンの掃除機の長所は、セクシーなデザインに耐久性など多々あるが、ひとえに「紙パックがいらず吸引力が変わらない」サイクロン方式に尽きるだろう。
たった一言で、「それはすごい」とわかるアイデアこそが、人をひきつける。「あれもこれも」と盛り込んだアイデアは、結局、焦点が絞りきれず訴求力が下がるというわけだ。
「なるべく余分なものを付け加えない」、それはダイソン氏のデザインルールであり、機能においてもそれは同じだ。
★コメント
以前のミネラル364号で取り上げた、スティーブ・ジョブズと同じ発想である。
364号の内容、アップルウォッチについて アップル関係者は「技術開発のアイディアが幾つもある時、スティーブはこれだと一つを選び、そこに集中した。ティムは一つに絞り込まず、全部選択肢として残そうとする」
あれもこれものてんこ盛り訴求は、消費者にとってどのような商品かが伝わらない。魅力を1点に絞ることが大切である。
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■『ダイソンの開発3原則-3「粘り強さ」』
★気づき
『粘り強さ』
幾度にわたる試作品の失敗も、資金難も、訴訟も、ダイソンは逃げ出さずにすべてにおいて真正面からぶつかってきた。既存の市場や権威を覆すような破壊的技術や製品は、先人たちに脅威を与えただろう。全力でつぶしにかかられるのも当然かもしれない。
「僕は賢い人間ではなく、根気強い人間でいるつもりだ。だって、根気強くがんばってきたおかげで、とうとうサイクロン式掃除機を自分の手でものにしたんだからね」
★コメント
「粘り強さ」とは、この商品を社会に出したいとの「想いの強さ」です。成功のキーファクターです。「想い」を持って開発しよう。
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■『ダイソンのマーケティング3原則-1「消費者調査に頼らない」』
★気づき
「商品開発では市場調査を先行させない。従来家電に使い慣れている消費者はその『問題』に気付きにくいためだ」(ダイソン氏)
本社からは毎週技術責任者たちが来日し、東京と大阪の一般家庭で掃除機や扇風機など発売前の商品を使ってもらい、その様子を観察する。5月は約20人が来日してそれぞれ1日5件ほど見て回った。訪問先は郊外の一軒家や都心のマンションなど様々だ。
そのため同社は調査会社を使った消費者アンケートを一切実施しない。その代わりに技術者自らが実際の掃除現場に潜入して観察し、そこでの「気付き」を開発に生かす。「事前に消費者の声や要望を聞いても多機能になりすぎるだけ。家電は実際に使われる現場を見て、本質的な機能に絞って極めることが大事」(ダイソン氏)。消費者が常に正解を持つとは限らないと考えるからだ。
★コメント
消費者自身も気づかない魅力を提案することが、これからの商品開発です。
使って見ないとその魅力がわからない、学習ニーズを発見することが顧客創造には必要です。不便も、消費者が不便だと思ってもいなかった不便を発見すること、不便の徹底的追求が新しい市場を創造する。チャンスは「現場」にある。
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■『ダイソンのマーケティング3原則-2「技術革新を持つ良い製品は宣伝しなくても売れる。過剰な宣伝より技術開発に投資する」』
★気づき
同社は宣伝広告費を過剰にかけない代わりに売り場作りに徹底的にこだわる。
店頭に真っ黒な専用じゅう器を並べ、自社販売員を派遣して丁寧に説明させ、値札も自前の物を使う。細かいところまで全て自社でプロデュースする。「安売りのイメージが定着しがちな家電量販店でも、しっかりブランドの存在感を築いているのはすごい」(日本のデザイン家電メーカー)と、競合他社も認めるほどだ。価格やイメージを消費者に訴求するだけではなく「実際に使って納得する」ことが購買への近道と考える。
東京・表参道に開いた世界初の直営店。100平方メートルの店内は白と黒に統一し、さながら「家電のアップルストア」。フローリング、畳、カーペット、タイルの4種類の床があり、製品を使い砂など5種類のゴミを吸い取れる。「量販店では伝えきれない性能を体験してもらう」という狙い通り、来店者は計画を上回る。
★コメント
画期的商品は広告ではなかなか伝えられない。まずは使ってもらう、トライアルが決め手になる。消費者の使用場面を設定した、トライアルの販促は魅力的。
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■『ダイソンのマーケティング3原則-3「良い製品は高くても消費者は付いてくるので安易な安売りはしない。価格の信頼性が商品力を裏付ける」』
★気づき
ネット上でも直営のアウトレットサイトをオープン。これまで安売りを一切やってこなかった同社にとって、大幅な値引きは初の試みだ。今月から店頭の棚をさらに増やすため、新商品が出るタイミングで小売店から旧商品を全て引き取り、店頭には新商品だけを並べる方針に転換した。引き取った商品はアウトレットサイトで直売する。ただしその価格が安すぎれば消費者が旧商品に流れてしまうため、半額などには決してせず、1割引きで「ちょっと安く」売る。
「ダイソンファンは『1万円しか変わらないなら新商品を買う』という人が多い。そうではない初心者を囲い込む(麻野社長)狙いだ。コード付きのキャニスター掃除機市場の価格別構成比は、3万〜5万円の製品が約2割を占める。ダイソン製品が多い6万円以上は3%強だ。「掃除機に7万円も出しにくい……」という若い人を取り込み、将来のファンに育てる。実際に「普及価格帯が出て固定客以外の購入者が増えた」(ビックカメラ)と効果も出ているようだ。
★コメント
商品に自信を持っている強さです。新規顧客、初心者の開拓の仕組みを作る、トライアル試しで使う、から実際に買って見ることによって、ブランドのロイヤリティーが高まる、1割引きで「ちょっと安く」売るは、なかなか知恵のある仕組みづくりです。
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◆土日朝一番の映画 映画は映画館で観るとワクワク・ドキドキです。
見たいけれど、あまり見られなかった。残念。今週はぜひ見に行きたいと思っています。
『きみはいい子』監督;呉美保 キャスト;高良健吾、尾野真千子
「そこのみにて光輝く」の呉美保監督作品、子供との関係に悩む教師、娘との関係に深く悩む母、家族にハグしてもらう宿題、同じ悩みを持った友達の心遣いによって人間関係が回復していく、深いテーマをヒューマンに描いた作品です。オススメ。
日本オリエンテーション主宰 まつもとかつひで
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■□■「MATSUMOTO・MINERAL」
■■■ 第382号(2015/8/4) (c) 1999Japan Orientation
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