1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「マツモトミネラル」

マツモトミネラル第83号

配信日:2003年03月04日

第83号
『オノマトペの力』 『ファーストミート』 『非顧客の重要性』『物語の生まれるトワイライトゾーン』他


毎回私の仕事、私的な世界を書いていても、おもしろい人にはおもしろい
が、大部分の人には何の興味がないことかもしれないなと思い、今回はこの
半月で私が話したこと(セミナーなどで)、聞いたことのミネラル部分をご
紹介してみたいと思っています。
話したこと:2月18日(火)19日(水)「商品開発プログラムのたて
方<30プラス6>時間コース」で、みっちり12時間話プラス参加者の懇
親会へ。テーマは「時代・市場・生活価値観の変化を捉えた商品コンセプト
発想法」「消費者テストによる商品コンセプト力・製品力・競争力の評価手
法」
18日の「時代・市場・生活価値観の変化を捉えた商品コンセプト発想法」
の内容は
・これからの魅力の開発は「・・が」欲しいを開発、ポジティブの拡大、生
活DELIGHTの提案。
・消費者は「もの」を欲しているのではなく、生活メリットを求めている。
「毛布」を求めているのではなく「自然な快眠」を欲している。
・商品コンセプトの定義があいまいになっている。
商品コンセプトとは「生活メリット」×「ターゲット」×「場面」の魅力的
関係づくり。関係は統一を作り、マーケットの予測につながります。
・今消費者が欲している生活メリットは、30%以上のリアルイノベーショ
ン。マスカスタマイズ(マイ・メジャー)。ソリューション。4S;スモー
ル、シンプル、ステディー、セイフティー。身体的・動作的・感覚的・精神
的・環境的・経済的不便の解消。
バランスを崩す、過剰・過小品質などによる嗜好化。生得的快、文化的快の
開発。情緒的価値の開発などなど。
・生活メリットの開発方法
商品の再定義(ビール、自動車、化粧品を再定義してみると)。前提、仮定
を外してみる。第3の視点。表、裏に対して第3の視点は。真逆、同じこと
をやっても同じ。次世代のなどの新視点開発。変化を捉えるキーワード開発
の方法、ボブ・サップ、多摩ちゃんから野生の魅力。ANDによる組み合わ
せ、おいしいAND健康の食。上方展開の仕方、健康の上位概念はイキイキ、
イキイキ食品開発。などなど。
・ターゲット開発、場面開発
テーマ商品からターゲットをどう捉えるか。アルコール飲料における「食べ
飲み派」「飲み食べ派」「飲み飲み派」など。場面としては未開発場面とし
て、寝ている時間、1日を48時間で考える。そして、いらいら、にこにこ、
ワクワクなどの気分場面が重要(感情表現辞典は役立つ)。
聞いたこと:2月26日(水)健康マーケティング研究会「健康提案企業
?事例研究」
松下電工、明治乳業の講師による「健康商品戦略の事例から学ぶ」がテーマ
でした。
・中高年の健康テーマは「鍛える」。魅力的ですね。
・健康は「手段」であって「目的」ではない。
健康の目的は「生き方開発」でなければ。そのために健康、美、前向きな心、
の一体的 開発提案が重要。
・サクセスフルエイジに対する気づきを作る
どんなサクセスフルエイジに対してどんな健康、美、心が必要になるのかの、
気づきづくり。
・健康商品成功のポイントは
トライアルのフックとしての「気づき」開発、継続化としての実感感。気持
ちよい、楽しい、成果が感じられるなどの。
・ユーザーの満足談が営業活動で重要
お客の満足体験をメーカー、代理店の担当者が感じることが売りの強さにな
る。
・健康サービス、ソリューションの開発。
・機能型食品のマーケティング展開の類型化
ビールメーカー型(マスマーケティングタイプ)、大塚型(ドラッグも)、
乳業メーカー型、特化型(カルピスアミール、花王エコナ)などがある。ど
のタイプで成功させるか。
・ニッチタイプ商品は
ニッチからマスへ。ニッチ市場成功の条件はニーズの深さ、商品の完成度、
共感者づくり。
スキミング戦略によるオピニオン市場へのロジカル提案と特定チャネル開発。
育てるチャネルと売るチャネルの複眼チャネルを。
オピニオンの共感者づくりが重要。
提案商品としての学会などを巻き込んだ必欲状況づくり。
なにかご意見があればお聞かせ下さい。
話したり、聞いたり、ディスカッションしたりしながら、実感・交感・共感
することが「直感力」を高めることにつながるのではないでしょうか。
             日本オリエンテーション 主宰 松本勝英

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■『オノマトペの力』
★解  説
  炭酸飲料の泡が、はぜる様子を表す「しゅわしゅわ」。この「食
 語」の浸透には明らかな年齢差(若者言葉)がある。しかし、若者
 でなくても、しゅわしゅわが醸し出す雰囲気は用意に想像できる。
 オノマトペの力であろう。オノマトペというのは擬音・擬態語のこ
 とである。サクサク、パリパリ、しっとりなどがある。
 ある朝の女子高生の会話「生卵で口がまったりしたところを、シュ
 ワーとコーラで流す。これがチョーうまい」。彼女の言葉が私にリ
 アルに迫ってきた。
 しゅわしゅわは泡が細かくて消えにくいビールには使わない。しゅ
 わしゅわは泡が消えていくときの表現なのである。オノマトペは感
 覚をストレートに表す、原始的であるが、同時に厳密で、繊細なも
 のだ。だからこそリアルなのである。
 2001.? 日経新聞 食語のひととき 早川文代(小田原女子短
 期大学助教授) 
★ミネラル
  オノマトペという言葉が魅力的ですね。なにか浮き浮きするよう
 で、未知の世界を感じさせてくれます。感覚時代の中でオノマトペ、
 擬音、擬態語の魅力を発見するとコンセプトの開発に役立ちます。
 「犬が「びよ」と鳴いていた」(山口仲美埼玉大学教授)光文社新
 書?。擬音・擬態語の基本形が載っているので参考になります。  
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■『ファーストミート』
★解  説
 ・少女用化粧品 年2億ドル市場、大手も参入へ
 大手メーカーがプリティーン(12歳以下)の少女を対象とした化粧
 品マーケットに参入。その大きな理由は「未来の消費者作り」にあ
 ると「ジェーン」(エスティーローダー)の商品開発担当副社長ド
 ン・ペティット氏は言う。「この年から特定なブランドに接触させ
 ておくことで、将来のロイヤルな顧客が作れるはず」。
                     1999.3.20 読売新聞     
★ミネラル
  ファースト・ミートのマーケティングの重要性を今まで指摘して
 きました。虎屋の羊羹のファーストミートを考える、ヨックモック
 のファーストミートのクッキーを考える、トヨタの車と、どんな感
 動のファーストミートが出来るか。重要なマーケティングテーマで
 はないでしょうか。
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■『非顧客の重要性』
★解  説
  非顧客の方が顧客よりも多い。市場シェアが30%を超えるもの
 は希である。非顧客は70%。非顧客の情報を持つものも希である。
 変化は常に非顧客の世界で始まる。
             (「明日を支配するもの」ドラッカー)
★ミネラル
  自分たちの顧客だけしか見ていないと、変化が見えなくなってし
 まいます。競争メーカーの顧客をウオッチングすることが重要。ト
 ヨタはホンダの顧客を、松下はソニーの顧客を。していますか。
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■『物語の生まれるトワイライトゾーン』
★解  説
 ・人間の内なる庭
 「物語」は現代人にとって非常に大切で、科学技術の発展によって
 得た、便利で快適な生活に、深さや味わいを与えてくれるものと思
 っている。その物語が立ち現れるのは、明確な二分法をあいまいに
 する境界であることが多い。虚実と被膜の間、つまりトワイライト
 ゾーンにこそ物語が立ち現れるというのである。
 「庭」はまさにトワイライトゾーンである。屋外であるが、家の敷
 地内でもある。科学技術の発展が下手すると外界を汚染するように、
 人間の内なる庭をも汚染してしまう。現代の思春期の子どもたちの
 「庭」は、大分荒らされている。
          2001.8.5 ?新聞 河合隼雄(臨床心理学者)  
★ミネラル
  暮らしや商品に深さや味わいが求められています。トワイライト
 ゾーン、薄暗がり、微光の世界、明け方、夕暮れの空間、ボーっと
 する時間がなくなってきていませんか。
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■『「情報の過剰」が「出来事の過剰」を生み出す』
★解  説
  安心できる世界は終わりを告げた。現代の情報社会では、すべて
 の世界が目に見えるものや記号に置き換えられ、メディアは「表現
 されることを望まないものまで力づくで表現しようとする。その結
 果は人々は異常な出来事を待ち望むようになり、情報の過剰が「出
 来事の過剰」を生み出してしまう。
 リアルな世界が仮想の世界に置き換えられて消滅したように、人間
 も個人としての姿を見失ってしまった。現代人は学校やメディアや
 大衆文化によって、互いに均一なコピーになりつつある。そのため
 に人々は、自分の身体や精神を痛めつけることで個人としての存在    
 を確認したり、何かに身をゆだねたりする衝動にとらわれかねない
 と危惧する。現代人は悪の力を恐れるが、「来るべき世界で避けら
 れないのは、善の力の圧迫のほうなのだ」(ボードリヤール) 
★ミネラル
  情報の過剰が出来事の過剰を生み、そして社会が不安になる。社
 会不安の元としての情報の過剰にどう対応するか。情報が成長要因
 から衰退要因になるターニングポイントにそろそろ来ているのでは。
 前回のミネラルで取り上げた阿久悠さんの日記の話と重なってきま
 す。心しなければ。

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 ■□■ 「MATSUMOTO・MINERAL」
 ■■■ 第83号 (2003/3/4) (c) 1999 Japan Orientation
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