1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「マツモトミネラル」

マツモトミネラル第92号

配信日:2003年07月15日

第92号
『非=物質化、脱=物質化』『スローライフ』『無印良品のMD』『競争回避戦略を』『デザイン革新』


「変な人」は魅力的。
机にダンスをさせたい、ロボットはこれから魅力的消費者になる。変な人が
市場を創造し、イノベーションをおこす。しかし変な人と、だめな人の判断
が難しい。紙一重だから。私の友達で、ミニチュアの鯨を開発して、鯨王に
なると言っていた人間がいました。彼はユニークなのか、ダメ人間なのか、
なかなか判断が難しい。大きな企業でイノベーションが起こらないのは「変
な人」がいられない環境になっているからでは。私は「変な人」も「ダメな
人」も大好きです。

今、放浪の人が「変な人」として注目されている。
癖があって好き嫌いはありますが、一人は種田山頭火。妻子を捨て、金を持
たない、ところを定めない、孤独であるのに他人の世話になる。周囲が何か
してあげたくなる。
もう一人は、山崎放代85年70歳でなくなるまで人の世話になりっぱなし。
世の中にはいつも放っておけないオーラを放つ人と、そういうオーラへのセ
ンサーを備えた人がいるのだ。(凸凹鏡朝日030703)

私の「変な人」との出会い
20年前に一人の「変な人」に会いました。私より5歳ほど先輩です。
大学生の時に「月刊企業診断」という雑誌の初代編集長をし、流通関係企業
のコンサルタントで「書家」。個展も何回か開き、「書」「経営」の本など
を書いていました。
世田谷に家があり、よく家へ飲みに行き、多くの人間が集まってきて、楽し
い話し合いの場でした。ある時から金に困りだし、家を売ってしまいました。
ここからが彼の真骨頂でした。毎年暮れになると「松本さんお金ある?」と
電話がかかってきます。10年ぐらい毎年の行事でした。
ある時などは、今日払わないと電気が止められてしまうと、いつもの「お金
ある?」の電話でした。しかし待ってもなかなか来ません。電車に乗れば3
0分ぐらいで来られるはずなのに、来たのは3時間後でした。電車賃がない
ので歩いて来たということでした。
お金を貸してくれといわれた時、断るしんどさを彼に話したら「貸してくれ
ないか」という私も苦しいと言われました。なんだか納得。
サラ金にも追われていました。毎日の取り立ての暴力的電話を録音して、こ
の取り立て人はなかなかやるな、こいつはだめだと、評価をしていました。
取り立てのヤクザから、「先生ご馳走しますから一杯やりませんか」と誘わ
れ、大変ためになる話を聞いたと感謝された話。
小説も書いていました、芥川賞に応募するとき、原稿の郵送料がなくて借り
にこられ、渋谷の郵便局に行って、郵送した後に乾杯をしたことがありまし
た。落選でした。

彼は結局ガンで亡くなったのですが、横浜の警察病院で手術を受けたとき、
国民健康保険にも入っていなかったので、その後病院にも行かず、講演、個
展を開くなどしていました。再発して看取ってくれたのは警察病院で手術を
してくれた医師でした。個人で開業していた病院に、一ヶ月ほど一人部屋に
入っていて亡くなりました。お金は払っていないとのことでした。優雅な最
期?でした。
彼にはオーラがあり、医師はオーラへのセンサーを備えた人だったのでは。
私にとって大変かけがえのない「変な人」でした。
損得で生きることより、好き嫌いで生きることを学んだ気がしています。
その人の書いた「書」をいまのホームーページで使わせてもらっています。 
             日本オリエンテーション 主宰 松本勝英

■『非=物質化、脱=物質化』
★解  説
  情報がデジタル化され、非=物質化、脱=物質化する。複製が瞬
 時に可能化し、それぞれのメディアの質量性から解放された。情報
 の値段は、その容れものの値段だった。書籍の製造、レコードにつ
 いても黒いディスクにお金が支払われていた。情報はそれが出荷さ
 れるパッケージと分離が出来ない。メディアの質量的特性が深く関
 与している。
 ものから離れた情報は喜びを与えてくれるか。カメラ、写真の印画
 紙、質量性がなくなると喜びがなくなる。コンピュータで情報を扱
 うようになってから興味が古いテクノロジーに向かうようになるの
 では。物質性が持つ魅力が愛着につながるのでは。
 「デジタルを哲学する」(PHP新書)黒崎政男 
★ミネラル
  デジタル化されてくればくるほど、物質性が重要になる。これか
 らは質感開発が重要になってくる。特に嗜好的商品には物質性が魅
 力になる。古木の家、ムクの素材、和紙などもおもしろいのでは。 
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■『スローライフ』
★解  説
 静岡県掛川市スローライフシティー宣言。
 スロースペース?歩行文化で頭脳明晰
 スローフード?和食、日本酒、お茶を楽しむ
 スローウエア?和服、和紙、
 スローインダストリー?有機農法、四季ある生活
 スローエデュケーション?生涯教育で大器晩性
 スローエイジング?老いても化粧して美しく
 スローライフとは「本物志向」
 明治学院大学辻真一『スローに生きてみないか』の特集で「生きるこ
 とは非効率なんですよ。人を愛することもスローなことなのです。誰
 が効率的に愛してほしいと望みますか?スローとは何かひとことで言
 うならば「命のつながり」です」     (朝日新聞020806)     
★ミネラル
  生活全体をスローにしていく。辻さんのお言葉には重みがあります。
 効率的愛から何が生まれるんでしょうか。
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■『無印良品のMD』
★解  説
 *ベーシックなアイテム
 *シンプルなデザインで素材感を全面に打ち出す
 *品質と価格のバランス
 *売場の環境と商品に整合性を持たせる
 *シンプル、ベーシックが価格以上に合理的
 *無印良品は「同じ品質で百貨店より30%以上やすい」基準
★ミネラル
  明確なMDの指針を持っていることがいいですね。シンプル、ベー
 シックをもとにパフォーマンス・バイコストのみ力を提案する。不易
 流行の不易をねらったMDでは。
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■『競争回避戦略を』
★解  説
 ゼロ成長の中で生き残るには競争戦略ではなく、競争回避戦略をとる
 こと。競争しないで価格を支配できる商品・サービスを生み出すこと
 が重要。そのためには差別化、独自化が必要になる。  
★ミネラル
 差別化に対して独自化の重要性です。これからは競争回避戦略が重要
 な戦略になります。人がやらないけれど好きだからやる、社会が求め
 ているからやる。一人の想いと共感する仲間と仕事をしていければい
 いですね。
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■『デザイン革新』
★解  説
 ・デザインは数字だ 社内発言力増す
 「社員は自動車デザインのことについては良く知っているが、車以外
 のことはあまり知らない。昨秋、社内で食器や家具など、車以外でデ
 ザインの優れたモノを値札もつけて陳列したコーナーを設けた。デザ
 イン部門以外の社員が世の中にあるモノに触れる機会を増やすことで、
 デザインが持つ価値を感じ取ってもらいたい」
 「デザインの良しあしはブランド価値に反映され、最終的には車の売
 れる値段という形で表れる」
 「日産は『パーシブド・クオリティー・チーム』と呼ぶ評価チームを
 設けて、商品の品質感などを数字に置き換える仕組みをルノーから導
 入した」
 「新型プリメーラの室内照明の色は、最初は繁華街のようにバラバラ
 で評価が低かった。土壇場で淡いオレンジ色に統一した。これだけで
 品質感はずいぶん変わった」
 「トップがデザインの重要性を理解している点が決定的」
         2001.5.30 日経新聞 中村史郎(日産自動車常務)
★ミネラル
 デザインの持つ価値を感じ取るには業界外の世界を見なければ。業界
 内だけを見ていると、相対的低下が見えてこない。車の中では優れた
 デザインに出会っても、インテリアなどのデザインがもっと魅力的な
 場合、そのデザインは魅力にならない。生活文脈の中で、デザインを
 を見ていかなければならない。
          
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 ■□■ 「MATSUMOTO・MINERAL」
 ■■■ 第92号 (2003/7/15) (c) 1999 Japan Orientation
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